靖国問題

 一昨日、TVタックルで「日本人と靖国神社」というタイトルの討論会を放映していた。
小泉さんの靖国公式参拝が焦点になっているのだが、「政教分離」から「極東軍事裁判」まで
浅く広く言い合いをする番組になっていた。
TVなので、カットされている討論も多いこととは思うが、すべてのタイトルの根本にある「日本人
とは何なのか?」という話題に誰も触れなかったことが残念だった。

「悪いのは大日本帝国であり、日本人ではない。」という言い回しは、まったく焦点がずれている
と思うが、国のために死んでいった多くの命を弔うことがなぜ問題となるのか・・・。
いわゆるA級戦犯が祀られているから?
そもそも「A級戦犯」などという言葉は日本人が自ら発する言葉ではないはずだ。
戦勝国が弁護もない状況で一方的に負けた国を裁いた「裁判」とは言えない法廷において、
勝った側の理論で犯罪とされるものを分類したものだ。classA、B、C、ということである。
エコノミークラスやビジネスクラスをエコノミー級とかビジネス級などとは訳さない。
いくらサンフランシスコ講和条約でこの裁判の判決を受諾することを決定されたとはいえ、当時の
敵国から押し付けられた基準を、さも増長するような表現で世間にさらし、卑屈で間違ったイメージ
を植えつけるマスコミの存在は許せない。教科書問題よりもたちが悪い。
だいたい、裁判であるならば、刑を執行された人間に対してさらに罪を認めろというような話は
おかしい。刑を執行され、死んだ人間の霊を祀ることがなぜいけないのだろう。

靖国神社の見解には問題がないとは言えない。
明治2年に戊辰戦争の戦没者を祀っていらい、2644000柱の戦没者が御霊として祀られて
いる「靖国」は戦後の政教分離によって民間宗教団体となったことから、神社としての見解を
何度か発表している。特に関連諸国から見ると問題視する内容のものもある。
しかし、靖国は神社という名称はあっても、他の神社とは違うのだ。
戦没者を祀る唯一の社に二度と戦争は繰り返さないという反省と誓いをこめて、総理大臣が参拝
することに関して外国からとやかく言われるものではないと思うのだが。

戦争責任の問題を言及すると、日本国内でも常に見解が多様化する。
「誰かが責任をとらなければいけない・・・」と発言した国会議員がいたが、その通りだとは思う。
しかし、極東軍事裁判で死刑判決を受けた7人と終身刑の判決を受けた16人の日本人の責任
とすることで終わる話ではないはずだ。また、国家の責任と定義するのであれば天皇の存在と
はどういうもであったのかということをはっきりさせなければいけないはずだ。

大日本帝国を作ったのも日本人であるし、皇国史観のもとに中国とアメリカを同時に敵国とする
無謀な戦争に突入していったのも間違いなく日本人だ。この流れをさかのぼると話はまず明治
維新ということになる。
700年近く続いた武家社会を近代国家に導くために必要だったものが日本国民の統一観念で
あり、それは何が一番いいのかというと古来息づいてきた宗教感を利用することだったわけだ。
神道的概念と天皇という存在を無理矢理再構築したのが、明治維新政府だ。
天皇家の歴史をさかのぼると、後醍醐天皇のように自ら国政の主導権をもっていた(持とうとし
た)天皇は例外と言ってよく、実は現代と同じく象徴的な存在であり続けたことは間違いないと
思う。だから武家政治の時代にあってもなくならなかったのだ。なにかのときには担ぎ上げる。
それでは、伊藤博文や大久保利通に根本的な責任があるのだろうか・・・。

結局、いくらさかのぼっても責任の所在がはっきりしないのだ。
それが日本という国において、物事が決まり進んできたスタイルなのだ。
ここにこそ注目しなければいけない。
わざわざ時間を使って結論を曖昧にして終わらせる会議や、多数決を嫌い、全員が納得する
まで話し合いを続けようとする習性は外国人には理解できない。
こいつらは時間を無駄にして一体何をしているんだ?と思われる。

日本人が一番大切にしようとする「和」という概念には、独裁、暴走を抑えると同時にお互いに
遺恨を残さないようにするという大きな目的がある。
聖徳太子が十七条憲法でまず最初に「一曰。以和為貴。」という条文を掲げたことを見ても、
さらに時代をさかのぼってこの国に「和」という概念が息づいていたことがわかる。
古代から現代に至るまで貫かれている「和」という概念、これは国民性というよりも、ひとつの
宗教的観念であるといえる。日本人の宗教的観念のベースになっていると言ったほうがいいかも
知れない。
すべての外来文化はこのベースにミックスされるから、仏教しかり、儒教しかり、民主主義しかり、
オリジナルとは違う、独特の文化が生まれることになる。
曖昧にすることで解釈の幅を持たせ、一人でも多くの人間が賛同できるようなものにして、あくま
でも全員の意思で決定しという形態をとりたがる。
言いかえれば、全員の意思という建前に重きをおく。
多くの人間は好んで他人から恨まれたいとは思わないはずだが、日本人は突出してこの傾向が
強い民族なのだ。
解釈と称して単なる言葉の置き換えや、自らが遺恨を水に流すことで、物事を強引に丸くおさめ
て前進するスタイルを守り続けてきた民族なのである。

前進という意味では良い面も多くあるが、独裁を防ぐためのシステムが一旦独裁体制に利用され
ると、その隠れ蓑となり責任の所在が曖昧になるという大変危険な面もある。
軍部の暴走を阻止できなかったのは、御前会議という隠れ蓑の中で曖昧なまま独裁が進んだ
結果である。天皇の勅旨という建前を手に入れれば堂々と敵の首をはねることができた歴史の
延長線にある国民性だ。
これは日本人にとっての現実なのだから、良いか悪いかという問題ではない。
日本の歴史を把握し、なぜ、今、自分たちはこう考えるのかという原因を知ることが、次の一歩を
踏み出す指標になるはずだ。

すでに勝敗が見えている戦争で原爆という大量破壊兵器を使用し、たった2発の爆弾で20万人
以上の一般市民を殺害したアメリカという国に対しても、遺恨は水に流し、自分たちが悪かった
のだからと強引に納得して前進する道を選んできた日本人。
立ち直りが早いというのは当たり前の話だ。
しかし、もう、この論理は日本独自のもので外国には通用しないということを一般教養として根付
かせなければいけない時だ。中国に対しても朝鮮半島の人たちに対してもまったく理解されない。
顔や着ているものは似ていてもまったく違う宗教観や思考回路をもっている人間なのだということ
を認めるべきだ。「和」は日本以外では通用しない。
そういう外国に乗り込んでいって皇国史観をもとにした教育を行ったという行為は恐ろしい。
「侵略」以外のなにものでもないと思うし、国家としての反省も謝罪も必要なことであったと思う。

しかし、今、日本人はこう考える、日本にはこういう宗教観がある、ということを対外的に提示する
ことはそれとは別の問題であり、国家としてこだわりを持っていいことではないだろうか。
遺恨を残して死んでいったものほど手厚く祀って霊を沈めるという神道的行為は普通に行われて
きたことであるし、そもそも死者を恨むという発想がないのだ。
神社という場所も外国人に説明するのは難しいことだが、問題はいったい何割の日本人がその
説明をすることができるのかということだ。
寺院にある墓ではないのだ。だいたい仏教の根本理論でいえば、生き物は六道を輪廻するの
だから、「霊」などという存在がないはずだ。だから墓は祀らないし、寺では鎮魂や慰霊は行わ
ない。この違いすら理解を得るのに時間がかかるだろう。
墓参りではなく、慰霊碑に顕花するのとも違う。

日本を知ってもらうためには、まず日本人が日本を知らなければいけない。
アイデンティティーなどという、日本語に訳せない言葉を使うつもりはない。
教育改革を始めて20年後に実現するような話かも知れないが、「まず日本を知ろうよ。日本人
を知ろうよ。」と言いたいだけなのだ。
by grid303 | 2005-07-13 19:57 | Others | Comments(1)
Commented by さんこん at 2005-07-14 02:38 x
お初です。
ご存知かもしれませんが、西尾幹二氏のコメントは80%程カットされたそうですね。


http://www.geocities.jp/grid303


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